そのUIは大丈夫?ユニバーサルデザインが機会損失を防ぐ理由
なぜ今、ユニーバーサルデザインが必要なのか
私たちは、「読める前提」でWebを設計していないでしょうか?
マーケターやWebディレクターにこそ、問い直したいテーマがあります。
ユニバーサルデザインとは何か。
それはブランド体験をどう左右するのか。
順に見ていきましょう。
ユニバーサルデザインとは?
Universal(普遍的な)という言葉のとおり、すべての人が使いやすいデザインを指します。
障がいの有無、年齢、性別、国籍にかかわらず、使いやすいと感じられる設計思想です。
この考え方は、1980年代にアメリカのロナルド・メイス教授によって提唱されました。
幼少期の病気により電動車いすを使用していたメイス教授は、
その経験から、できるだけ多くの人が利用できるデザインの必要性を提案しました。
ブランド体験をどう左右するのか
小さな文字。
細すぎる書体。
コントラストの弱い配色。
世界観は整っている。UIも洗練されている。
けれど、それは本当に「届いている」のでしょうか。
「表示されている」と「届いている」は違います。
表示はされている。
しかし読めない。だから離脱する。
Webにおいて「読めない」「使えない」は、静かに積み上がる機会損失です。
87%の時代に「読めない」が起きる要因
まずは、社会背景から

日本のインターネット普及率は、約87%。
人口の多くが日常的にWebへアクセスしています。
さらに、15〜79歳の利用者のうち約53%がスマートフォンのみでアクセスしています。
閲覧環境はすでにPC中心ではありません。
つまり私たちのコンテンツは、
屋外で、移動中に、片手で、小さな画面で読まれている可能性が高いということです。
出典:「Digital 2026/DataReportal」レポート結果より
では、どのような配慮が必要なのでしょうか。
シニア(小さな文字が見えにくい方)
日本では65歳以上が約29%を占めています。
一方で、インターネット利用率は70代65.5%、80代33.2%と、年齢が上がるにつれて下がります。
フォントサイズを大きくするなど、読みやすさへの配慮は欠かせません。
ダイバーシティー(見え方に特性のある方)
日本には障がい者手帳保持者が約415万人。
色覚特性を持つ人は20人に1人といわれています。
UI設計では、カラーコントラストへの配慮が重要です。
数字だけを見ると、インターネットは「ほぼ全員」に届いているように見えます。
しかし実際には、閲覧環境も、身体的特性も、年齢もさまざまです。
ほんの数%の離脱。
ほんの数秒の滞在時間の差。
その積み重ねがブランドの印象を決めます。
表示されている。
しかし読みやすいとは限らない。
アクセスできる。
しかし理解しやすいとは限らない。
このズレが、静かな離脱を生みます。
ユニバーサルデザインは、情報が届く確率を高める設計です。
87%の時代だからこそ、「誰にでも届く設計」は戦略になります。
身近にあるユニバーサルデザイン事例
私たちの身の回りにも、ユニバーサルデザインは取り入れられています。
道路の点字ブロック、多機能トイレ、スロープ、手すり、シャンプーの容器、プリペイドカード、自動ドアなどがその例です。
ITが普及した現代では、モノだけでなく「情報」におけるユニバーサルデザインも求められています。
インターネットでは、誰もが情報へたどり着けるアクセシビリティ、迷わず必要な情報を見つけられるユーザビリティが重要です。
フォント、色、レイアウトを考慮した設計によって、情報の受け取りやすさは大きく変わります。
こうして、誰もが同じように情報を受け取れる環境を整えていきます。
万博・オリンピックにみる工夫

大阪・関西万博2025や東京2020オリンピックでは、年齢や国籍、身体的特性をこえて楽しめる設計が取り入れられています。
多言語対応の案内表示、直感的に理解できるピクトグラム、色覚特性に配慮した配色。
「見ればわかる」サイン計画が安心感につながります。
東京大会では約1,100万人以上が観戦に訪れました。
多様な来場者に対応する情報設計の重要性が示されています。
その中で大きな役割を担うのがフォントです。
遠くからでも読みやすい文字、誤読しにくい形状、適切な文字間と行間。
こうした設計が、安全でスムーズな体験を支えています。
ユニバーサルデザインは公共空間だけのものではありません。
グローバル企業でも「伝わる文字」への投資が進んでいます。
ブランドを守る、ユニバーサルフォントという選択

たとえば、IBMは独自フォント「IBM Plex」を開発。
多言語環境での可読性とブランド表現の両立を目指しています。
Googleは「Noto」を展開し、世界中の文字体系に対応しています。
トヨタ自動車も独自フォントを導入し、国内外で統一した情報発信を行っています。
共通しているのは、「読める」ことを前提にブランドを設計している点です。
文字は装飾ではなく、信頼を届ける基盤です。
フォントは企業の人格であり、多様な人に届くかどうかを左右する接点でもあります。
ユニバーサルフォントの導入は、やさしさの表明ではありません。
ブランド価値を守り、広げるための戦略です。
可読性と世界観は両立できるか

ここが、今回の核心です。
可読性を優先すると無難になるのではないか。
世界観を守ると読みにくくなるのではないか。
多くのブランド設計で語られる葛藤です。
しかし事例に共通していたのは、どちらかを捨てるのではなく、設計によって両立させる姿勢でした。
可読性は妥協ではありません。
世界観は装飾ではありません。
文字はブランドの印象をつくり、体験の質を決めます。
いま必要なのは、「読める」と「らしさ」を同時に考える視点です。
次回は、文字づくりの現場へ。
可読性と世界観をどう融合させているのか、プロフェッショナルに迫ります。
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