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カスタマージャーニー

カスタマージャーニーとユーザーシナリオの違い

須賀 剛史

須賀 剛史

2024/11/07
カスタマージャーニーとユーザーシナリオの違い

「カスタマージャーニーを正しく実施できてますか?」

弊社でもご案内しているカスタマージャーニーなのですが、色んな企業様にお伺いしている中で「やったことあるよ」「実施済みです」などいうお答えいただく事がございます。

私たちも、勉強用にとその際に実施されたワークとアウトプットを拝見する事をお願いしておりまして快くご共有頂く事もあり、拝見する機会もあるのですが、多くのそれは「カスタマージャーニー」ではなく、「ユーザーシナリオ」の作成に留まっていることがほとんどです。

「実際に、この結果が何か施策に結びついていますか?」とお尋ねすると、「そんなに効果が出ていないかな」と答えられることも多々あります。




カスタマージャーニーとユーザーシナリオの違い

「正しいカスタマージャーニーを実施して頂きたい」

これが私たちの願いです。では、カスタマージャーニーとユーザーシナリオは何が違うのでしょうか?
カスタマージャーニーは「目的」「顧客像」「スタートの状態とゴールの状態」がハッキリしており、なりより「顧客視点」で実施されている事が見てすぐ分かります。
これに対し、企業目線でのフロー整理にとどまり、顧客の視点を欠いてしまうものが「ユーザーシナリオ」になりがちです。

こういう整理になってしまってるのには実は理由があります。




カスタマージャーニーがユーザーシナリオになってしまう理由

1、施策ありきで根拠を探しに行ってる
2、企業目線で情報を整理してしまっている
3、顧客ペルソナの想定が不十分である
4、明確なスタート・ゴールが設定できてない

これら4つのうち、どれか一つでも当てはまると、「カスタマージャーニーを行ったつもり」でも、実際にはユーザーシナリオにしかなっていないという状況に陥りやすくなります。せっかく行うカスタマージャーニーが無駄にならないように、以下で詳しく説明していきます。





1、施策ありきで根拠を探しに行ってる

このケースは、「集客ができていないからSNSを始めよう」とか、「新規顧客を集めるための広告を検討する」といった具合に、施策が先行している場合によく見られます。この状態でカスタマージャーニーを行うと、情報がその施策に引っ張られ、「理由」を正当化するだけの後付けに陥りやすいです。

:スキンケア商品の売り上げを上げるために、「F1層(20歳~34歳)」の集客を増やすという意見があるとします。「F1層がよく使うものはTikTokだ」という整理だけで話が進んでしまうと、TikTokで集客を行うという施策が先行し、その理由付けだけが行動として洗い出されます。

f1層だからといって安直にtiktok施策を考えているイメージ図

正しいカスタマージャーニーでは、ペルソナの行動から情報のコンタクトポイントを探り、その上で施策を最適化する必要があります。

ポイント:目的から施策を決めるのではなく、顧客行動を探ってから適切な施策を選ぶことが重要です。





2、企業目線で情報を整理してしまっている

自社商品やサービスを販売する際、「誰にとってのベネフィットか」という視点は非常に重要です。しかし、「この商品を売りたい」という企業目線が強くなりすぎると、顧客視点が欠け、効果的な訴求が難しくなります。

:「自社の化粧水は、肌にうるおいを与え、みずみずしい肌をキープする効果がある」という特徴を前面に出して、「効能を分かってもらう」ために成分表を掲載するような整理は企業視点です。

顧客視点では、ユーザーが本当に求めているのは「みずみずしさ」だけでなく、何かしらのきっかけや潜在的な欲求に基づいた情報です。

企業目線で捉えてしまうというのは製品サービスありきでその効果・性能などが先行する場合に使ってもらってるユーザーベネフィットとしての訴え方やユーザーが本当に欲してるのは「みずみずしさ」の前にある「きっかけ」に答えがあったり、「インサイト」と呼ばれる生活者自身すら気付いてない潜在的な欲求だったりするかもしれません。

上記を見つけ出すことは非常に難しいですが、情報過多の中、これを見つけに行く事は他社との違い(POD-Point Of Differenceー)を見つけなくてはならない今の市場の中でユーザー行動からのアプローチとして探しに行くという事がカスタマージャーニーから始めてみるというきっかけとして有用な部分でもあります。

カスタマージャーニーの様子

ポイント:企業目線から顧客目線に切り替えることで、顧客の真のニーズを捉えた訴求が可能になります。





3、顧客ペルソナの想定が不十分である

ペルソナ設定が曖昧であると、顧客接点や施策の明確化が難しくなります。マーケティングの目的は、自社の商品やサービスを顧客に認知され、売れる仕組みを作ることです。そのため、「こういう人にも、ああいう人にも」となるペルソナでは、行動の洗い出しが散漫になります。


仮にペルソナとして重要視しているターゲットが複数あるのであれば、複数のカスタマージャーニーがあるはずで、そのアプローチ方法が異なってくるはずなのです。
今までのマーケティングが最大公約数を求めに行った「マスマーケティング」としての顧客へのアプローチの限界は、「広告単価の向上」「情報過多によるユーザーへの訴求の複雑化(パーソナライズの重要性)」などが背景にあり、そんな中、よりターゲットを具体化しなくてはならないのでPP(プライムプロスペクト)という設定をしっかり捉えなくてはなりません。

:「30代前半の女性で最近肌の弾力が衰えてきていると感じている人」というペルソナでは情報が足りません。デモグラフィック、サイコグラフィック、ジオグラフィックなどの詳細な要素を明確にすることが求められます。

ポイント:ターゲットを具体的に絞り込むことで、カスタマージャーニーの精度が向上します。

カスタマージャーニーの様子





4、明確なスタート・ゴールが設定できてない

「売上を伸ばす」ことを目的にした施策は多いですが、スタートが「自社のサービスを知ってもらうきっかけ」として設定されることが多く、その具体性が欠けていることがあります。結果、WebサイトやSNSでの情報提供のみを考えたユーザーシナリオにとどまります。

:化粧品であれば、ユーザーが求めているのは「美しい肌」という結果であり、その商品で実現する理想の自分です。(一方で、アーティストグッズやアイドルグッズのように、商品自体に価値を感じるケースもあります。)

ポイント:AISCEASやAISAS、AIDMAといったフレームワークを参考に、スタートからゴールまでの流れを明確に設定することが重要です。

顧客目線に立つと、「ユーザーが自社サービスを知る前に、なぜその商品を探そうとするのか?」が重要な起点になります。ユーザーが本当に求めているのは「商品」そのものではなく、商品を通じて得られるベネフィット、さらにはその商品がもたらす理想の「未来」です。

スタートとゴールを設定することの重要性

このように、ユーザーの「本当の欲求」を理解した上で、スタートからゴールまでの流れを明確に設定することが大切です。例えば、AISCEAS(アイシーズ)、AISAS(アイサス)、AIDMA(アイドマ)などのフレームワークを使うことで、各ステージごとに適切なアプローチが見えてきます。

カスタマージャーニーのワークショップを行うと、特定のステージで情報が豊富に出る一方で、別のステージでは情報が乏しいというケースがよく見られます。これは、企業側にとって未解決の課題や、見落としているポイントが浮かび上がっている状態です。逆に、このギャップこそが新たなチャンスであることも少なくありません。

スタートとゴールが明確であると、ペルソナの各ステージで「私たちは何ができるのか?」「顧客は何を求めているのか?」という視点の変換が自然と促されます。この視点を持つことが、カスタマージャーニーの成功につながる鍵です。

よく言われるように、「どうしたら売れるか?」から「顧客は何が欲しいのか?」という視点への転換が、カスタマージャーニーの本質なのです。

カスタマージャーニーの様子





まとめ

的確なユーザー像、スタートとゴールの明確な設定、顧客視点の徹底が揃って初めて、効果的なカスタマージャーニーの作成が可能になります。このプロセスを通じ、自然と施策の解決案が浮かび上がります。

一方、施策を考える視点に引きずられすぎると、ワークショップ中に発言や行動が「顧客視点」から外れ、結果として新たなインサイトの創出が難しくなりがちです。自社でワークショップを実施する際、どうしても「バイアス」が入りやすいのも一因です。過去の経験や固定概念、先入観が無意識に影響し、顧客視点に立ち返るのが難しくなる場面が出てくることも少なくありません。

ヨリミルのカスタマージャーニーサービスは、このワークショップを第三者視点でファシリテートし、バイアスがかからないように導くことを強みとしています。ワークの進行や軌道修正、ワーク終了後の情報整理・レポーティングまでを一貫して行い、お客様の「お客様に最も近い存在」としてサポートできる点が、私たちの提供価値です。





ヨリミルでカスタマージャーニーを行うメリット

カスタマージャーニーの説明を行っている様子

フューチャースピリッツは、創業から28年にわたりIT業界でお客様と共に歩んできました。長年お付き合いいただいているお客様も多く、担当者も変わらず同じメンバーが継続してサポートしてきました。その背景には、担当メンバーが「お客様の事業の一番のファン」として、その成長を本気で応援し続けているからです。

ヨリミルのサービスは、こうしたフューチャースピリッツの長年のお客様視点が基盤となっています。今年からスタートしたこのサービスでも、私たちの変わらぬ「お客様第一」の姿勢が活きています。

カスタマージャーニーのワークショップでも、長年の信頼関係で培ったノウハウを活かし、お客様が本当に求める価値を一緒に見つけていきます。どうぞお気軽にご相談ください。

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須賀 剛史

この記事を書いた人

須賀 剛史

デジタルマーケティング事業本部/ストラテジックマーケティング部/シニアマネージャー

クライアントワークを軸に、お客様のデジタルマーケティング全般をサポート。さらに、ヨリミルのサービス設計・構築にも注力しています。

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