Similarwebで紐解く「ウルトラマン」の現在地
親子で見つけた、令和のウルトラマン発見マップ
ヨリミルの高村です。
先日、息子と一緒にウルトラマンの名場面を見返していたとき、自身のカラータイマーが光りだしました。
「いま、ウルトラマンはどうやって新しい世代に"見つけられて"いるんだろう?」
翌日、Similarwebという科特隊の秘密兵器を手に取り、現代のウルトラマン発見経路を静かに、丁寧に紐解いてみることにしました。ここで提示する数値はSimilarwebの推定値ですが、現在の"空気感"をつかむには十分すぎるほど興味深い動きを見せてくれたのでした。
1. 奇跡的に素直な右肩上がり -- 数字が語る「いまの熱気」
※本記事で紹介する数値は、Similarwebの推定データをもとにしています。実際のアクセス数や販売数を示すものではありませんが、全体の動向やトレンドをつかむ参考指標として活用しています。
最も目を引いたのは、その驚くほど「健全な」成長曲線でした。月次の合計クリック数(推定)を追うと、2024年8月の3,660回から2025年8月の23,120回へと、およそ6.3倍の飛躍的な伸びを示しています。
この数字の向こうには、月に2万3千回もの"出会いの瞬間"が生まれています。令和の子どもたちが昭和生まれのヒーローと初めて出会う瞬間、親が懐かしさで検索する瞬間、カードゲームから入った子どもが本編に興味を持つ瞬間----それらすべてが、この右肩上がりの波を作っているのです。
「去年の終わり頃が底で、ここ数ヶ月で一気に上がった」という一過性のブームではなく、まるで大地に根を張り、静かに幹を太くしていく大樹のような、長期的で持続可能な成長を描いています。月間成長率に換算すると約15-17%の巡航速度で、関心の地層が厚くなっていく手触りが感じ取れます。
2. 「自走する」ブランド力 -- オーガニック検索が物語る真の強さ
さらに注目すべきは、この成長がほとんど「自然発生的」に起きているという点です。月次のオーガニック対ペイドの比率を見ると、期間を通してオーガニック検索がほぼ全量を占めていました。
これが意味するのは、ウルトラマンというブランドが強力なコンテンツ力と根強いユーザー支持によって「自走」できる力を持っているということです。「話題が立つ → 自走して伸びる」という理想的なサイクルが機能しており、大規模な広告投資に頼らずとも、ユーザーの自発的な関心によってトラフィックが生まれています。
小さな見立て: 「思い出し検索(レガシー)」と「確かめ検索(公式・EC)」が土台となり、「初見検索(新作)」がその上を走る三層構造が、広告なしでも巡航する基盤を作っているのではないでしょうか。
3. 美しい三層構造の同居 -- 検索ワードが映し出す関心の循環
直近28日間の上位検索キーワードを見ると、ウルトラマンの「現在地」が鮮明に浮かび上がります:
- 「ウルトラマン」(軸となる総称)
- 「ウルトラマンオメガ」(現行のウルトラマン)
- 「ウルトラマンゼロ」(レガシーヒーロー)
- 「ウルトラマンカードゲーム」(アミューズメント)
- 「ウルトラマンティガ」(レガシーヒーロー)
この並びが示すのは、新作・レガシー・体験が同じ画面で穏やかに共存している稀有な状態です。新作だけが突出でも、懐かしさだけが滞留でもない。三つの魂が同じ画面で燃えているのです。
よくありそうな回遊パターン:
- 体験発→作品回帰: カードゲーム → 登場キャラが気になる → ゼロやティガの名場面へ
- 新作発→世界観補強: オメガで温度が上がる → 百科で用語・系譜を確認 → 公式・配信で一次情報へ
- 懐かしさ発→いま入手: ティガの記憶 → 動画で"あの感じ"を確かめる → ECで「いま手に入る」へ
4. SERPが描く「発見の生態系」-- 多様な扉への優しい往復
2025年8月のSERP(検索結果ページ)スナップショットは、現代のコンテンツ発見プロセスを象徴的に表していました。上位ホストには、YouTube、pixiv百科事典、テレビ東京、バンダイ、映画サイト、そして公式サイトが並びました。
この多様性こそが、現代のウルトラマン体験の豊かさを物語っています:
- 動画(YouTube): まず視覚と聴覚で「好き」の温度を上げる
- 百科(pixiv百科事典): 背景や用語を補完し、理解を深める
- 公式・メーカー: 一次情報で確証を得て、「いま手に入る」を確かめる
- メディア: 最新情報や作品の文脈を追う
「まず動画で温度を上げ、百科で背景を整え、公式・メーカーで一次情報や"いま手に入る"を確かめる」という自然で心地よい回遊ジャーニーが、検索結果の一画面から読み取れるのです。
5. 週次の「小さな山」が語る生きた呼吸
週次の合計クリック推移を見ると、長期的な右肩上がりの中に、短い周期の山がいくつも現れていました。これは、ウルトラマンコンテンツが「生きて呼吸している」証拠です。
新エピソードの放送、キャラクターの誕生日、関連ニュースの発表----様々な「小さな出来事」が検索の波を生み、それが全体の上昇トレンドを支える「うねり」として機能しています。まさに「長距離走の途中で、ところどころペースが上がる」ような、持続可能な成長パターンです。
6.海外の"火点"は北米+東南アジアに広がっている
国別集計を見ると、米国が頭ひとつ抜け、続いてインドネシア/日本/ブラジル/インド、さらにマレーシア/英国/カナダ/タイ/メキシコが続きました。北米での厚みと、東南アジア(インドネシア/マレーシア/タイ)の強さが同居しているのが印象的です。
英語ラベルで見ても日本が3位に入っており、国内の英語検索/海外発信と日本側の関心が行き来している気配があります。
この地理的分布だけでも、ウルトラマンが国内コンテンツにとどまらず、複数言語・複数文化で同時に発見されていることが読み取れました。「新作(いま)×レガシー(記憶)」の二層が国境を越えて響く力を感じます。
7. 今回の学び
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発見から回遊までの"やさしい循環"は、小さな輪の積み重ねでできている
作品紹介の末尾に用語の小窓(百科)、名場面のそばに30秒の公式短尺、グッズの写真の下に「いま手に入る」正規先。この3つの小さな輪があるだけで、読者は無理なく次へ進みます。数字の右肩は、派手な仕掛けよりも迷わなさの連鎖で説明できる場面が多い、と実感しました。
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"現行・レガシー・体験"の三層は競合せず、互いの温度を保つ
現行(例:オメガ)が火を入れ、レガシー(ゼロ/ティガ)が地力を支え、体験(カードゲーム等)が今へ引き寄せる。検索語の並びは、この三層が同じ画面に並んで成立していることを示していました。ここに、ウルトラマンが長く愛される燃焼のしくみを見ました。
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SERPには"扉"が4枚ある――公式・百科・動画・EC
ある月のスナップショットだけでも、YouTube→百科→公式→ECと行って戻ってまた行く往復が見えました。どの扉から入っても、他の扉に自然につながるのがいまの発見経路です。一枚だけを強くするより、四枚が仲良く見えることが大切だと学びました。
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右肩の増加は"広告"ではなく"自走"で説明できる月が多い
期間平均でオーガニックがほぼ全量。ピークも直近月。これは、積み上がった関心が自力で山をつくる体質を示します。私の解釈では、思い出し検索(レガシー)+確かめ検索(公式・EC)+初見検索(新作)の三点支持が、自走の土台になっています。
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週次の"小さな山"は、ウルトラマンがいまも"生きている"証拠
短い周期の持ち上がりが点在します。大事件でなくても、小さな話題や更新が確かに検索を動かす。私はここに、毎週どこかでカラータイマーが光るようなリズムを感じました。
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言語が変わると"入口の比率"が変わる
「ウルトラマン」と"ultraman"では、動画・百科・公式の見え方が少し変わります。ウルトラマンは国内外で発見され続ける存在で、同じ地図でも注釈一行で読みやすさが変わることを学びました。
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数字は"厳密な実数"ではなく"現在の空気"を映す
Similarwebの推定は方向とリズムを見るのに十分でした。私は、比率・順位・新陳代謝(語の入れ替わり)を中心に読むことで、ノイズよりも呼吸を掴みやすいと感じました。
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ウルトラマンの強さは、"正解へ導く"より"迷わない導線をそっと置く"ところにある
スペシウム光線のような一直線の打ち上げではなく、やわらかな往復を支える道標が効く。今回の観察で、私は「押す」のではなく「置く」ことの価値を覚えました。
8. おわりに:関心の循環が育む、未来への可能性
今回のSimilarwebデータからの「静かな観察」は、ウルトラマンが単なる懐かしいコンテンツではなく、いま現在も成長し続ける「生きた文化」であることを雄弁に語ってくれました。
6.3倍の成長、オーガニック中心の自走力、新作・レガシー・体験の三層構造、多様なチャネルが織りなすSERP、そして週次の小さな山々----これらすべてが、「関心の循環」という美しいエコシステムを形成しています。
迷わない小さな"輪"をひとつ、またひとつ。
派手な施策はありません。ユーザーの好奇心という火を絶やさず、彼らが求める情報へとスムーズに導く小さな導線を丁寧に設計する。それだけで、今日の「見つけた!」という一瞬の感動が、明日の「もっと見たい!」という深い探求へと静かに育っていくのですね。
息子と一緒にウルトラマンを見返したあの夜から始まった疑問は、データという客観的なレンズを通して、現代のコンテンツマーケティングが目指すべき理想形の一端を見せてくれました。
いまのウルトラマンのデジタル発見経路は、まさに「光の国から僕らのために」届いているように、多世代へと優しくつながる光の道しるべなのです。シュワッチ!
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