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IRに「デジタルマーケティング思考」あ〜る?IR-SEO & GEO戦略

2025/12/18
IRに「デジタルマーケティング思考」あ〜る?IR-SEO & GEO戦略

こんにちは!ヨリミルライターの大前です。

これまで数回にわたりIRについてお話ししてきましたが、今回はより「ヨリミル視点」で深掘りします。
テーマは 「IRサイト × デジタルマーケティング」

「誰に、どう届き、どう心を動かすか」というマーケティング思考を取り入れると、企業価値の伝わり方は大きく変わります。これからのIR活動がどう進化していくのか、一緒に見ていきましょう。

「開示」から「マーケティング」へ

デジタル戦略が変えるこれからのIR活動

最近のIRサイトは技術的に大きく進化していますよね。
しかし中身の思想が、少しだけ...2000年代の「Web2.0」に留まっているケースも見受けられます。

情報はデジタル化され、検索できて、動画も掲載されている。
でも実態は 「企業が一方的に情報を並べているだけ」になってしまっていることも。

これでは「開示(Disclosure)」の義務は果たせても、「対話(Dialogue)」にはなりません。

投資家のみなさんは、ただのPDF置き場を見たいわけではありません。
その企業の「今」と「未来」にワクワクし、疑問が解消され、「この会社なら大丈夫だ」と納得したいのです。

1. デジタルマーケティングの常識をIRにも!

マーケティングの世界では、10年以上前から「顧客とのエンゲージメント(絆・対話)」が最優先です。

  • マーケティングの常識
    相手の興味に合わせて情報を届け、反応を見て、会話を楽しむようにファン化につなげる。

  • 現在のIRの「非常識」
    誰が来ても同じ対応。PDFをポンと置くだけ。読まれたかどうかの分析もない...。

マーケティング部門が「顧客体験(CX)」を磨く一方で、IR部門が「投資家体験(IX)」を後回しにしていては、激しい競争に勝てませんよね?

2. IRにも「デジタルマーケティング」を!

課題:良いモノでも、知られなければ「ない」のと同じ

どれだけ業績が良くても、認知されなければ投資行動にはつながりません。
マーケティングで「良い製品も宣伝しなければ売れない」のと同じで、
IRも 「業績が良い=株価アップ」という単純な話ではない のです。

「社名」で検索してくれる投資家だけでなく、
"まだ出会っていない未来のファン" にどう見つけてもらうか。

そこで重要になるのが、SEOとSNSによる 「見つけてもらう(流入獲得)」作戦です!

IR-SEO & GEO戦略:検索とAIに見つけてもらう!

AI検索(ChatGPT、Perplexityなど)が広がる今、
Google検索(SEO)に加えて GEO(Generative Engine Optimization) も欠かせません。

  •  ロングテール × AI最適化
    「DX銘柄 成長性」「脱炭素 関連銘柄」など、投資家が検索しそうなワードを踏まえたコンテンツ設計を。

  • 脱PDF!重要情報はHTMLに
    PDFはAIに読み解きづらい形式。
    大切なCEOメッセージや成長戦略はHTML化しておくと、AIが引用しやすくなり投資家に「この会社がおすすめ」と引用してくれる可能性も。

  • 構造化データでAIフレンドリーに
    FAQや数値データを整理して構造化すれば、AIも検索エンジンも理解しやすく、表示もリッチ化され一石二鳥です。

IR-SNS戦略:SNSで「聴く」力を鍛える

今の投資家は、公式サイトよりSNS(X、LinkedInなど)を重視しているケースも多くみられます。IRサイトとSNSのクロスチャネル設計は必須です。

  • 攻めのアピール
    適時開示の自動投稿だけではつまらない。
    インフォグラフィックやショート動画で「ひと目でわかるIR」を発信し、タイムラインで目立っちゃいましょう!

  • SNSの声を聴く(ソーシャル・リスニング)
    みんなの決算への反応は「ポジティブ?」「ネガティブ?」「誤解されている点は?」リアルな声を拾い、次の発信に活かすのがプロの技。

3. 実践編:MauticでIR活動も「自動化」しちゃう?

マーケティングの武器
「セグメンテーション」「パーソナライゼーション」「スコアリング」
これらはIRにもそのまま装備して応用できます。

高価なツールもいいけど、コストを抑えつつ自由度の高いオープンソース Mautic なら、次のような活用が可能です。

Mauticでこんなことできちゃいます

  • アクティブ投資家の発掘!
    「財務ハイライトを見た?」「社長動画を最後まで見た?」など、IPアドレスや閲覧履歴をスコア化して、熱量の高い機関投資家にこちらからアプローチ。
    既存の個人投資家の動きをトリガーに、IR担当者から面談を提案することもできます。

  •  個人投資家をファン化する「ステップメール」
    メルマガ登録してくれた人へ「当社の強み → 新事業 → 株主還元」など、タイミングや興味に合わせて段階的にメールを届けることで、理解と好意を育くみ、知れば知るほど好きになる!さらに、熱量が上がっていくのをスコアリングで可視化し、効率的なコミュニケーションが可能。

  • 関心に応じたWeb接客
    ESGに興味がある人にはトップページを「脱炭素の取り組み」バナーに自動切り替え。
    「私のことわかってるね〜」と思わせるWeb接客の体験を。

4. 結論:IRは「コスト」ではなく、「価値を生む装置」へ

デジタルマーケティングの手法を取り入れれば、
IRサイトは単なる資料庫ではなく、投資家の心を動かし、エンゲージメントを高める最強のツールに進化します。

企業価値(時価総額)は
実力(EPSなど) × 期待(PER) で決まります。
この「期待」を高めるためには、待つだけでは不十分です。

マーケティングチームが製品を広めるために行う
SEO・SNS・Go-to-Market戦略をIRにも転用し、
能動的に市場へアプローチしていく必要があります。

「情報を置く」だけでなく、「届けて、動かす」。

データドリブンなマーケティングの技こそ、これからのIRの秘密兵器。
デジタルで対話を深め、企業価値をググッと押し上げていきましょう。

それが、次世代IRの新しい楽しみ方です。

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大前 司

この記事を書いた人

大前 司

デジタルマーケティングのお仕事をするにあたって、窮屈に感じる事が増えクライアントからの期待値もワクワクするような事は期待されず、コンバージョンレートを1ポイントでも2ポイントでも上げるようなそんな期待を求められる事が増えています。 この業界に従事するうえで、数年前までは、ビジネスを大きく変えるデジタルマーケティングの技術にクライアントも胸を躍らせ、支援する側も目を輝かせながら、提案書を作っていた景色がありました。 今はそうなっていないという事ではないですが、AI技術の一般普及、ノーコード技術などの便利な技術が増加している一方で、デジタルマーケティングに関わる人たちが、少し委縮し、未来に対してワクワクしない状況が少しずつ蔓延していっているように感じています。 デジタルマーケティングの業界が少しでもワクワクするような情報や、体験を少しずつでも、紹介していきたいと思います。

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